1972年に知られざる傑作アルバムを作ったボビー・チャールズはルイジアナ州南⻄部の⽥舎で⽣まれ育ったソングライターでした。1950年代にロックンロールの⼤ヒット曲「See You Later Alligator」の作者でもある彼は歌⼿としても素晴らしい才能を持っていたのに、極めてシャイな性格で脚光を避けていました。⽇本には意外に多い彼のファンの⼀⼈としてこのドキュメンタリーをぜひ多くの⾳楽ファンに⾒ていただきたいです。
人物のドキュメンタリー、特に最近ミュージシャンのもの数々あれど、このボビー・チャールズのドキュメンタリーは 新たな発見や、さらに他のことに目を向けさせてくれた。なにしろ1972年のウッドストックの住人たちと作った「ボビー・チャールズ」というアルバムが頂点で唯一と思っていたから。その前後を観ることによってアメリカの中のフランス音楽の興味深さが浮かび上がる。
さっきそこでボビーに会ったよ、相変わらずよれよれで、あれじゃいつ新作ができるものやら、ダメだねこりゃ。 とかなんとかへらへらとあらぬことを口走りたくなるのはこの映画に漂う南部の空気のせいだろう。そしてそんな空気をたっぷり吸いこんだボビーの歌のせいだろう。もうそれで十分だ。
仲間達が手づくりで作ったようなアットホームな映画。だからこそ、世捨て人のように生きた愛すべきソングライター、ボビー・チャールズの息遣いが伝わってくる。ケイジャン、ニューオーリンズ、ウッドストック、様々な土地の音楽を吸収した彼の音楽は、正真正銘のアメリカン・ミュージック。映画を観終わったあと、大好きな「スモール・タウン・トーク」を聴いて極楽気分に浸った。
ぼくがアリゲーターって英単語を覚えたのはこの人のおかげです。日本ではともすれば「スモールタウン・トーク」一発のシンガー・ソングライターと思われがちかもしれません。けど、彼がロックンロール史上で果たした役割の大きさをこの映画が改めて教えてくれます。